1990/5/4

　わたしが生まれてはじめてプラネタリウムに行ったのは浪人生の時（不幸なことに、こどもの頃に連れていってもらったことがない）、今から8年前の1990年でした。高校卒業と同時に神泉に引っ越してしまった友達に会いに、高校の友達と4人で会いにいったときです。（なぜか全員浪人生だった）だから、わたしの生まれてはじめてみたプラネタリウムは五島プラネタリウムだったのです。これは幸せなことと思います。だって、はじめてみたところが自分にとっての基準になりますから。

　その日はその神泉に越した友達の企画で一日過ごしました。神泉駅で待ち合わせ、その子の家でひと休みし、歩いて渋谷まで行き、プラネタリウムを見る、ということでした。プラネタリウムに行ったことにないわたしは「一体どんなところなのだろう？？」と思いながら、「にせものの星なんか見ておもしろいのかなぁ？」とも思いました。

　渋谷の雑踏をぬけて東急文化会館の8階に行くと、そこは別の世界のようでした。静かで、照明も落ちつていて、ほっとできそうな雰囲気です。今でも、エレベーターの扉が開くときがたまらなく好きです。今まであんなに人がうじゃうじゃいたのに、そこだけ違う空間みたい。
　ゴールデンウィークということもあってか、長い列に並んでチケットを買ってドームの中に入ってみると、ますます特別な場所のような感じがして、とてもわくわくしました。

　投影のテーマはオースチン彗星でした。
　内容はよく覚えていませんが、それまで星座を知りたい気持ちはあってもどうしたらよいかわからなかった、そんな欲求不満の気持ちを解消できた1時間でした。とても楽しかったのです。家に帰ってから、よし、夜空の星を見よう！と思いましたが、さっぱりわかりませんでした。もらってきたパンフレットを眺めながら、月に一度くらい通えばきっと少しずつ覚えていくんだろうな、と思ったのを覚えています。

　しかし、それは実現しない希望でした。
　だいたい渋谷にいったのもそのときが生まれて初めてで、渋谷はわたしにとっては遠い遠いまちでした。
　そのときにもらってきたパンフレット（2月〜5月の分）は見方もわからなかったけど、いつかわかったときのためにと、ずっと机の引き出しの中にしまっておきました。何度も、つかわないから捨ててしまおう、と思いましたが他に星の資料は全く持っていなかったので、捨てずにいました。
　4年くらい前に机の掃除をしているとき、これはついに役に立たなかったな、こればっかりは興味がわかなかったと思い、どうせもう見ることもないから捨ててしまうことにしました。

　どうして、高校で教わったケプラーの法則とかＨＲ図とかはわかるのに、中学の学習内容の日周運動とか年周運動はわからなかったのだろう、とずっと不思議だったのが、最近になってようやく原因がわかりました。中学で教わっていなかったのです。
　中学1年の時、授業の進度が大幅に遅れてカットされたのです。神奈川県では中学2年の成績とアテスト、中学3年の成績と試験本番が入試に重要なので、中学1年の内容である天体はカットしても入試には差し支えないとカットされたのです。理科1分野の化学や物理は2,3年の学習の基礎となるのではずせません。天体は中1だけですからね。仕方がなかったのでしょうが、「ああ、あのとき天体の学習をしていたら、もう少し早く星の楽しみを味わえたのに」と残念で仕方ありません。
　せめて、こんな大事なことをカットされている、ということに気付いていたら、独学できたのに。

やはり、星と縁があるのでしょうか。
　家族のだれも星に興味がなく、星空を眺めたこともなく、星の話を聞かずに育ち、プラネタリウムにも連れていってもらえず、学校でも教わらなかった。
　そのまま星に興味を持たずに通り過ぎても当然なのに、どうしてこうなっちゃったんでしょう？

　まさか、月に一度渋谷の五島プラネタリウムに通うなんて、8年前には思いませんでした。2年前、中1の授業を持ったのがきっかけで、仕事のせいにしてプラネタリウムに通うようになって、本当に良かった！
　あのときにはオリオン座とカシオペア座と北斗七星と北極星しかわかりませんでした。でも今はたくさんわかるんです。夜、駅から家まで 歩いて帰るのが楽しくってしょうがないんですよ。
　流れ星を初めてみたのは2年前の夏。それが、最近はよく見ます。3月に寸又峡に行ったときも、バリに行ったときも、そんなに長い時間見ているわけではないのに、見られました。普通の帰り道に見ることもあります。（人魂だったりして）
　お願い事は決まっています。
「また流れ星が見られますように！」
　まだ、3回唱えられたことはありません。

　星の世界に触れてから、うれしくって、たのしくって。落ち込むことも多いのに、毎日充実しています。
　きっとこれが、心に風邪をひかない、ということなのでしょうか。
　こんなわたしになってしまったのは五島のおかげ。本当ですよ。
　まだ五島に通いはじめて半年位の頃、お気に入りの解説員の方にサインをしてもらったことがあります。
「みなさんが星が好きになりますように」
　そうかいてくだいました。そして、すっかりその通りになってしまいました。